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2006年8日15日 オオクワガタ飼育 菌床ブロク飼育編
話はいきなりさかのぼって1ヵ月前。

前回の更新が終わった直後の事。
「さて、ホームページの更新も終わって、あとは1か月後、8月中旬の割り出しを待つだけだな」と、物語にありがちな、状況を説明するための主人公のひとり言から今回のお話は始まります。

さらに状況を説明するためのベタなひとり言は続きます。
「産卵セットから取り出せたメスは1頭だけだけど、ちょくちょくフタを開けて中を確認していれば、他の3頭も1週間以内には取り出せそうだね」

産卵セットを組んでから1ヶ月がたち、ブリーディングは順調に進んでいるようですが、そこには1つだけ不安が残っていました。それはあの人工カワラ材。

オオクワガタのメスは人工カワラ材にまったくといってよいほど手をつけていませんでした。
人工カワラ材での産卵セットは初めてですので、経験による正確な判断は下せませんが、
あの人工カワラ材を普通の産卵木として考えると、今までの経験から、とても産卵されているとは思えません。

「もし、あのカワラ材に産卵していないとすると・・・・」
産卵セットに入れたのは産卵木1本と、カワラ材1本。カワラ材に産卵していないとなると、
産卵しているのは産卵木1本だけになってしまいます。ホームセンターなどで売られている標準の産卵木より太いとはいえ、予定していた頭数の幼虫が手に入らなくなってしまう可能性があります。そうなると、その後の実験に支障が・・・・。

「う〜ん、何か良い打開策を考えなくては」

取り出したメスを別の産卵セットに入れるか?。
しかし現在取り出せているメスは1頭だけ。他のメスを確実に取り出せる保障はありません。
それに新しい環境にメスを投入したところで、すぐに産卵を開始してくれるかどうか不安です。

「ダメだな、こりゃ」
そう思いあきらめかけた時、別のアプローチからの打開策が頭に浮かびました。
産卵木も取りださない、メスも取り出さない、そして産卵を継続させる方法。

そう、産卵木の追加です。

産卵セットのケースはかなり大きなケースです。スペースには十分余裕がありますので、埋め込みマットを取り除いて太い産卵木を追加する事くらい造作もありません。

「カワラ材の産卵比較実験はどうなる?」
ちょっとややこしくなりそうですが、特に問題はなさそうです。
割り出した幼虫の大きさを比較すれば、オオクワガタのメスがどの産卵木を好んだか一目瞭然。

カワラ材から割り出した幼虫が大きければ、オオクワガタはカワラ材を好む事が分かります。
産卵セットによってカワラ材の幼虫と普通の産卵木の幼虫にばらつきがあるようですと、オオクワガタのメスは産卵材を選り好みしない事が分かります。

私の判断では人工カワラ材には産卵していないと思われます。
もし人工カワラ材に産卵せずにここで追加した産卵木に産卵するような事になれば、産卵する準備が出来ているメスでさえ、人工カワラ材を避ける傾向がある事を証明できます。

さっそく産卵木を準備し、産卵ケースのマットを取り出して出来たスペースに産卵木を追加しました。もちろん取り出したメスは元の産卵セットへ。

そして1ヶ月がたち、割り出しを予定していた今日になりました。
さて、どんな状態になっているでしょう。

最初の産卵セットを取り出して中を覗いてみると・・・・

う〜ん、なんともすごい状況です。

写真上にある2本の普通の産卵木はかなり削り込まれています。追加した産卵木もしっかり削られているのに、写真下、やや左側にあるカワラ材はまったくの手付かずです。

やる気満々のメスの前に、2ヶ月間もされされていたというのにまったくの無傷とは・・・・。

すぐにでもカワラ材を割り出したいところですが、まずは普通の産卵木から。
カワラ材も気になりますが、一番最初に確認したいのは、やはりメスが産卵しているかどうかですからね、一番産卵している確率の高いヤツから割り出し開始です。

最初からセットしてあった普通の産卵木を引っこ抜き、割り出し開始です。

するとどうでしょう。2令まで成長したオオクワガタの幼虫がザクザクと出てきました。

しかし、例年ですと10円玉の大きさくらいまで成長した幼虫が1頭くらいは出てくるものなのですが、それほど大きく成長した幼虫はいません。

産卵開始が遅かったのか、それともカワラ材から産卵を開始したのか・・・・。

次に割り出したのは、追加した普通の産卵木です。

後から追加した産卵木ですので、産卵しているかどうかとても不安でしたが、オオクワガタのメスは私の期待にしっかり応えて産卵していてくれました。

もちろんほとんどが小さな1令の幼虫。
卵も何個か出てきました。

最初から入っていた産卵木にも、後から追加した産卵木にも、順番通り産卵している事が分かりました。カワラ材にとっては前も後ろも塞がれて、もはや逃げ場の無い状態での割り出しです。

カワラ材を取り出してナタを軽く振り下ろし、刃を3センチほどカワラ材に食い込ませます。
そして食い込んだナタの刃を横に倒しながらテコの原理でカワラ材を2つに裂きます。

「バリバリ」

カワラ材は真っ二つ。きれいに割れたカワラ材を覗き込むと・・・・

「えっ、え〜〜」

そこには、太陽の光に照らされ、眩しいばかりに白く輝く美しいカワラ材の断面が!。

外から見た感じではまったく削られた様子がなかったため、中もそれほど削られていないだろうと予想していましたが、まさかここまでオオクワガタのメスに嫌われていようとは・・・・。

他の産卵セットから取り出したカワラ材も惨敗です。


右の写真はカワラ材の下の部分に少しだけ削られている形跡がありましたので、入念に調べてみましたが、出てきた幼虫は下の1頭だけ。

メスの削り痕の状況や、幼虫の食痕から推測すると、メスがカワラ材に卵を産みつけたというよりは、幼虫がマットの中を移動してカワラ材にたどり着いたと考えるのが妥当だと思います。

たどり着いた場所が偶然メスが削っていた場所だったため、材がむき出しになった場所からカワラ材の中に入っていった感じです。

どうやらウチのメスたちは、普通の産卵木に産卵できた事である程度満足し、お気に召さなかったカワラ材には無理に産卵しなかったようです。しかし、そこにまた気に入った産卵材が追加された事により、産卵する気を起こしたようです。

産卵木を追加せずにいたら、幼虫が十分割り出せず大変な事になっていました。

しかし、割り出せたのは4セット合わせてたったの60頭。去年の半分以下です。

最初の産卵木に産卵し終わってから、新しい産卵木が追加されるまでに、たくさんの時間を浪費してしまったのが原因と思われます。

去年より少なくなるとは思いながらも100頭程度は割り出せるだろう楽観していただけにかなりショックです。

さて、今回はちょっと変わった方法でオオクワガタを飼育してみたいと思います。
菌糸ビン飼育ならぬ、菌床ブロック飼育です。

菌床ブロックに穴をあけ、その穴の中に種をまくようにオオクワガタの幼虫を投入します。

穴はそっと埋め戻し、菌床ブロックを包んでいたビニール袋も、ホッチキスで止めて元に戻せば出来上がり。

念のため針で30ケ所ほど空気穴を開けておきました。

オオクワガタの幼虫を8頭入れた菌床ブロックを2つ。3頭入れた菌床ブロックを3つ作りました。

えっ、実験の目的?、う〜ん、実は結果が出てみないとなんとも言えない変な実験でして(^^ゞ

菌床ブロック1つから、ハチミツ600の菌糸ビンは8本作れます。
菌床ブロックを8等分して、それぞれ菌糸ビンとしてオオクワガタの幼虫に与えた方が良いのか、それともまとめて菌床ブロックとして与えた方が良いのか・・・簡単に言うと、そんな比較実験。

オオクワガタの幼虫にとってみれば狭い菌糸ビンに閉じ込められるより、大きな菌床ブロックで飼育された方がよいような気もします。しかし、周りにたくさんの仲間がいる事は音で判断できるでしょうから、それがストレスになってしまうかもしれません。

ストレスがどちらの方向に向かうか・・・・。仲間に菌床を食べられる前に自分が食べてしまおうと一気に食い進むのか、それとも仲間に菌床を食べられてしまう事を覚悟して最小限のエサで羽化しようと考えるか・・・・。

もしかしたら仲間の発する音を頼りに、共食いに向かうなんて事も・・・・(^_^;)

菌糸ビン飼育より菌床ブロック飼育の方が育ちがよいようなら、さらに飼育法を発展させ、衣装ケースに菌床ブロックを10個ほど敷き詰め、その中に幼虫を放つような飼育法も考えられます。

菌床ブロックを崩して添加剤を混ぜ、衣装ケースの中で菌糸を再生させた菌糸ビンならぬ「菌糸ケース」なんてものも考えられます。

1ブロック8頭の菌床飼育は、同じ菌床の量でも幼虫同士がスペースを共有することにより、あたかも広いスペースが確保できている様に見えるという仮想空間の世界。それに対して1ブロック3頭の菌床飼育は、1頭あたりの菌床の量を増やす事により、1頭あたりのスペースを現実に広げてあげる実空間の世界です。

3頭しかオオクワガタの幼虫を入れなかった菌床ブロックでは、幼虫たちはお互いをあまり意識せずに育つ事が出来ると思いますので、ハチミツ600で飼育した幼虫と比べれば、広いスペースで飼育した場合と狭いスペースで飼育した場合の育ち方の違いを比較する事が出来ると思います。

本当は菌床ブロックに1頭しか入れないで実験をしようと思ったのですが、割り出し後の幼虫の死亡率は高いですし、投入した幼虫がメスだとあまり意味が無いので、3頭まとめて投入する事にしました。3頭なら全部死んでしまうとか、全部メスという確率はかなり低く抑える事が出来ますし、お互いの干渉も最低限にとどまると思います。

これと並行して行う、もう1つの実験は菌糸ビンの水分量。

菌糸ビンの水分量と、オオクワガタの幼虫の育ち方について考えてみたいと思います。

菌糸ビンを仕込む時に水分を多くしても、水分の蒸発は瓶によってまちまちですので、今回は瓶に直接水分を補給する方法を採用しようと思います。

菌糸ビンの上にティッシュを置き、そのティッシュに十分水を含ませます。

名付けて「多湿菌糸ビン飼育」

乾いてしまった菌糸ビンへ水分を補給するために私が考案した方法ですが、常時ティッシュを濡れた状態にして幼虫の成長過程を観察するのは初めてです。

幼虫を埋めた穴の上に濡れたティッシュを置いてしまうと、幼虫が窒息死してしまうのでティッシュはリング状にしています。そして常に濡れた状態を保つために1週間程度で水分を補給する予定です。

と、いうわけで、今回は実験の都合上プリンカップは使えずいきなりハチミツ600に投入です。

100頭の割り出しを予定しておりましたので、菌床ブロック飼育に30頭、多湿菌糸ビンに30頭、比較用の普通の菌糸ビンに40頭、合計70本の菌糸ビンと5個の菌床ブロックを用意していました。

しかし、予定の100頭に対して実際に割り出せたのは60頭。用意した菌糸ビンや菌床ブロックの4割が無駄になってしまいました。

プリンカップが使えない時に限って、割り出し頭数が予定より大幅に下回ってしまうなんて、
ついていないです。

それもこれも全てカワラ材が原因です。とは言うものの、海のものとも山のものとも知れないカワラ材産卵からハチミツ600に直接投入という実験の流れを考えたのは私ですので、仕方ないといえば仕方ないですね。

そうそう、忘れていました。1年前に交尾させたオオクワガタのメスが産卵するかどうか実験していましたね。あの産卵セットも割り出しをしないといけません。

産卵セットのフタを開けると産卵木はちょっと乾き気味。霧吹きをしようと思い付きもしなかった程度ですので、その期待の低さが伺えます(^^ゞ

前回写真でお見せしましたが、産卵木の削られ方は、産卵している産卵木の見本のような
見事な削られ方でした。しかし、いくらなんでも交尾から1年もたっている訳ですから・・・。

産卵木をつまんで産卵セットから取り出そうとしたら、産卵木がバキッと折れてしまいました。
「ずいぶんもろくなっているな」
折れた産卵木に何気なく視線を向けると・・・・

ええっ、え〜〜

幼虫です。それも2頭も!。

うっそ〜

信じられません。

最初は期待していたものの、実験が進むにつれて「やっぱ無理だよなぁ〜」って、あきらめていましたから。

産卵木を取り出してさらに割り出していくと、1本しかない産卵木から次々に幼虫が出てきます。合わせて10頭。

オオクワガタは、他の昆虫に比べて活発に飛び回る事が少ないため、オスとメスが出会う確率が低い上、成虫になってから3年も生きるという特殊な生態をとっておりますので、交尾をしてからある程度長い期間産卵が可能であるのではないかと推測しておりましたが、まさか1年も持つとは。

来年産卵予定のペアには秋口に一度交尾させ、そして翌年の産卵直前にもう一度交尾させればペアリング失敗の可能性が極端に低くなります。さらに、この方法なら万が一オスが冬を越せずに死んでしまっても、翌年その遺伝子を子供たちに引き継ぐ事が出来ます。

思い掛けず良い結果に恵まれた事に感謝。

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