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酸素



菌糸ビンの中の酸素はどんな状態になっているんだろう?。
そんな疑問に答えるべく、酸素濃度計によって菌糸ビンの中の酸素の状態を調べてみました。

まずは、実験方法です。
850ccのPPボトルを3本用意しました。ボトルの底にドリルで穴を開けて酸素濃度計のセンサーを挿入できるようにし、通常は粘り気のある粘土のような物で完全密封しておきました。

菌床のつめ方は普通の硬さで、つめた菌床にドライバーを使って底まで通気用の穴をひとつ開け、コバエが進入しないようにフタに非常に通気性のよい紙を挟みました。

再生温度は24℃です。

まずは菌床再生時の菌糸ビンの中の酸素の様子から。

1日後
4日後
6日後

1日後はほとんど菌糸が再生していない状態でしたがPPボトルの底には酸素はほとんどなし。5.9%となっておりますが、数字はもっと下がっていく勢いでした。耳をつんざくようなアラームがビービー鳴るので途中で測定をあきらめました。

2日後と3日後も1日後とほとんど同じ酸素濃度。変化が現れたのは4日後。
底のほうまで一通り菌糸が回った状態で酸素濃度が7.8%。さらにビンの底まで完全に菌糸が回った6日後では酸素濃度が13.7%まで回復しましたが、大気レベルの21%には及びません。人間なら完全に死んでます。


10日後
その後は1日に1%ほどずつ酸素濃度が上昇し、再生を始めてから10日後に酸素濃度が18%を超えました。
しかし、この後酸素濃度は上昇せず、3週間ほど測定し続けましたがずっと18%前後となっておりました。

18%と言う酸素濃度は人間にとって死に直面するほどの低さです。クワガタの幼虫はかなり低濃度の酸素で生きていけるといえます。

ですが、菌糸ビンに幼虫を入れるときは左の写真のように完全に菌糸が回って酸素濃度が高濃度で安定する時期まで待ったほうが良いと思います。

残りの2本は菌糸ビンをひっくり返したときの効果を調べるために使いました。
日曜日に菌糸ビンを作って、1週間再生。土曜日の朝にひっくり返して、次の日の日曜日に使うと言う設定のもと、菌糸ビンの底にたまった酸素の濃度を調べてみました。

一週間後
ひっくり返さなかったビン
ひっくり返したビン

単純に酸素濃度ということであれば、ビンをひっくり返してもひっくり返さなくてもあまり変わらないようです。さらに1週間後再測定してみましたが、ひっくり返したほうが酸素濃度17.6%、ひっくり返さなかったほうが17.8%とほとんど差が出ませんでした。

しかし、3週間後になると様子は一変。ひっくり返さなかったほうのビンの酸素濃度はじわじわと下がり始めました。菌糸の再生がほぼ一段落し、発熱が収まったため空気の対流がなくなり、重い二酸化炭素が底にたまり始めたためと思われます。ひっくり返したほうのビンは低濃度ではありますが18%の酸素濃度を保っています。

3週間後
ひっくり返さなかったビン
ひっくり返したビン

菌糸の再生中はビンをひっくり返さず、2,3週間たって菌糸の再生が終わったあとはひっくり返して保存するのが良いようです。

6週間後
ひっくり返さなかったビン
ひっくり返したビン

さすがに6週間もたつとビンの中の酸素濃度は安定しはじめます。しかし、大気中の酸素濃度21%には遠く及びません。このあと、菌糸ビン内に幼虫が入ると酸素濃度はどのように変化するのか、実験してみたいと思います。


酸素濃度が幼虫に与える影響について継続調査中です。

30%の高濃度の酸素を発生する装置を購入し、密閉性の高い容器の中を高濃度酸素で充満させ、その中で幼虫を飼育しています。酸素発生器はプログラムタイマーで管理し、容器内の酸素濃度は26%〜28%の間で推移してます。


まずは6週目。

こちらが、通常の酸素濃度で飼育している幼虫たちです。

割り出したときの大きさがあまり大きくなかったこともあって、まだ食痕が少ししか現れていない個体もいます。

顔をのぞかせている上の段の左から2番目の幼虫も、それほど大きくありません。
こちらが高濃度酸素ケースで飼育している幼虫たちです。こちらのほうが確実に大きくなっています。左から3番目の個体の菌糸ビンを交換しました。体重は20.6gでした。

このまま大きく育つのか、ただ単に大きくなるスピードが速いだけなのかは、今の段階では分かりませんが、とりあえず、高濃度酸素飼育のほうが幼虫の活性は高く、成長速度が速いことは確かなようです。

そしてこちらが4ヶ月弱後の2回目の菌糸ビン交換のときの最大の個体です。
今までの自己ベストである23グラムを更新する個体の成長してくれました。

このままの勢いで成長してくれれば70ミリ後半も夢ではないと思われました。

その後も順調に成長し、30グラムまであとちょっとという個体まで現れました。


しかし、順調だったのはここまで

上の写真の29グラムを超えた幼虫が、2頭とも蛹化できず、そのうちの1頭が死んでしまいました。

高濃度酸素の影響でしょうか、それとも大きく育ちすぎてしまったのでしょうか。

大型の幼虫を蛹化させる技術や知識が私に無かったという事もありますのが、原因が特定できませんので一時、高濃度酸素飼育は中断し、通常飼育下と高濃度酸素飼育下での蛹化できない幼虫の出現率を比較した上で、再開するかどうか検討したいと思います。

そして高濃度酸素飼育下で最大の個体がこちらです。



体長は78.5ミリ。測り方によっては79ミリに限りなく近づきます。
通常飼育では個体数が多いにもかかわらず最大77ミリでしたので、高濃度酸素の優位性は実証できたと思われます。
死亡のリスクをどう処理するかが今後の課題です。

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