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2007年5月27日 ダニ退治
何かと実験好きな「ドルクスデザイン」なのに、なぜこれについて実験をしないのか、疑問に思っておられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「ダニ退治」。

オオクワの成虫の体にびっしり付いたダニの写真を、いろいろなホームページで見かけます。
そして、その対策として、歯ブラシでそぎ落とすとか、水で洗うとか、市販の薬品を使うとか、
いろいろな方法が試されていますが、手間や効果や金額を考えると、これといって決定的な駆除法が見つかっていないのが現状のようです。

やる気が無かった訳ではないんです。アイデアが無かった訳でもないんです。
どう言う訳かウチのオオクワの成虫には、ダニが付かなかったんです。
退治する相手がいないのでは、どんなにがんばっても退治なんて出来ませんもんね。
しかし、冬眠の季節が終わった今年の春。幸か不幸かとうとうその時がやってまいりました。

冬眠に耐え空腹状態の成虫たちに今年初めての給餌をしていた時の事でした。
ある飼育ケースのフタを開けると、そこにはエサ皿に頭を突っ込んで、まだ冬眠状態のメスがいました。ゼリーを入れるため、そのメスをエサ皿の中からつまみ出そうとした時、そのメスの異変に気が付きました。

何かゴミのようなものがクワガタの体を縁取っています。

「木屑?・・・・・じゃないよな」

クワガタの体が水に濡れていれば、マットが体にくっつくこ事ありますが、甲が濡れている様子はありません。

「こいつが、ダニってヤツか・・・・」

ホームページなどで良く写真を見かけていましたので、正解を導き出すまでにそれ程時間はかかりませんでした。クワガタを取り出してダニの様子を良く観察したかったのですが、ダニが私の体にも密集してこびりついてしまうような恐怖を感じ、どうしても手に取る事が出来ませんでした。ケースを手に取り、その中を前後左右から覗きこむようにして観察です。

体の縁、目の周り、足の先など、ある一部分に密集してダニは付いているようです。
特に足先は、まるでチアリーダーのボンボンのようになっちゃっています。
ダニにもそれなりに居心地の良い場所というのがあるみたい。

すぐに「ダニ退治」が頭に浮かびましたが、まだ気温は低いし、冬眠明け直後だったため、
ダニ退治の耐えうるだけの体力がクワガタにないと思われ、暖かくなるまでしばらくこのままにしておく事にしました。

そして季節は流れ、初夏を思わせるような陽気。本日、ダニ駆除の実験開始です。

究極の「ダニ対策」として用意していたのは「砂」です。

「砂?」

ビックリを通り越してあきれ返ってしまったような声が聞こえてきそうですね(笑)。
「水で取れないものが砂で取れるわけ無い」
まあ、そう言わず、とりあえず最後まで実験のお付き合いくださいな。

鳥の砂浴びをご存知でしょうか。鳥は体に付いたダニを駆除するために、自分で巻き上げた砂を頭からかぶり、それを振り払うように全身をブルブルと振ります。それを数回繰り返すだけ。本当にたったあれだけの砂浴びでダニが駆除できるなら、ダニの付いたオオクワを砂の中に潜らせれば・・・・。

鳥の砂浴びからヒントを得た今回の実験。果たしてどんな結果が出るのでしょう。

用意したのはアクアリウムで使われる「砂」です。ADAの「淡彩砂」という商品です。

これにした理由はいくつかあります。
まず第一に、アクアリウムで使用するため、塩分が含まれていないという点。砂は海から採取している事が多いため、砂の粗悪品には塩分が含まれている事があります。

塩分は生物にとって必要不可欠なものですが、「塩漬け」が保存食になるように、多すぎる塩分は生物にとってとても有害です。

第二の理由は粒が最適である点。
公園などの砂では粒子が細かすぎて、クワガタが砂の中に潜った時、呼吸が出来なくなってしまう可能性があります。しかし淡彩砂はコーヒーなどに入れる「グラニュー糖」位の粒子の砂で、公園の砂などより多少粒子が粗いため、潜っても呼吸できるはずです。

砂って結構、空気を通さないんですよね。
子供の頃のちょっと汚い話。浜辺に打ち上げられて、ハエがブンブンたかっている大きな魚の腐乱死体を見つけると、家から直径60cmくらいのたらいを持ってきて魚を回収。それを公園に持って行って、魚がちょうど埋まるくらいまで砂場の砂を入れて半日くらい待つと・・・・・呼吸できずに苦しくなって這い上がってきた無数のウジ虫(ハエの幼虫)が、たらいの縁に沿ってグルグル這いずり回っています。

とても汚くて、記憶から消し去ってしまいたくなるような思い出ですが、当時は労せずして生餌が手に入る最高の手段だったため、カマキリやカエル、トカゲなどを飼っている時はしょっちゅうやっていました、もちろん親には内緒で(笑)。

こんな方法どこで覚えたんでしょう。本で読んだのか誰かに教わったのか、まったく記憶にありません。もしかしたら無類の生き物好きの私の事ですから、生まれた時から本能的に知っていたのかもしれません(笑)。そういえば「釣り」を教わった記憶も無いので、単に記憶力が弱いだけなんでしょうね、きっと(笑)。

閑話休題。

粒子が細かすぎず粗すぎない「淡彩砂」を、いつも使っている飼育ケースに入れます。ここで重要なのは、砂を十分に乾燥させておく事。

少しでも水分があると砂同士がくっついてしまい、結局、酸素の透過度が落ちてしまいます。

それに、鳥が砂浴びする時は、必ず湿り気の無いカラカラに乾燥した砂を使用していますので、これは砂浴びの必須条件と思われます。

砂を天日干しで乾燥させる場合は、乾燥後、十分熱を冷ましてから使用しないと、クワガタが熱射病で死んでしまう可能性もありますのでご注意ください。

もちろんこの「淡彩砂」はカラカラに乾燥させた状態で袋詰めされていましたので、乾燥させる必要はありませんでした。ただでさえ重い砂なのに、水まで含んでいたら取り扱いが不便なだけでなく、出荷の際、重量がかさんで余分な送料まで取られてしまいますからね、メーカー側もしっかり乾燥させてからの出荷のようです。

そしてこのケースの中に、ダニまみれのオオクワガタを投入。
クワガタをそのまま触るのはちょっとはばかれましたので、クワガタが頭を突っ込んでいるエサ皿ごと取り上げて、エサ皿から落とすようにして砂ケースに投入しました。

写真では見づらいですが、背中や足だけでなく、触覚や目の周りなどにもたくさんのダニが付いています。

砂ケースに投入したのは午後1時。クワガタは、砂の中に自分で潜っていく様子ではなかったので、私が砂の中に埋めました。

クワガタは嫌がる事無く、そのまましばらく砂の中でじっとしていました。

そして夜の7時。体内時計で目が覚めたのか、砂の中から這い出てきました。
砂の中に潜っていないと、効果がないと思われたので、クワガタを砂の中に埋め戻しましたが、10分ほどでまた砂の上に出て来てしまいました。活動時間ですからね、無理に埋め戻しても、また出て来てしまうでしょう。仕方なくそのまま好きにさせておく事にしました。

そして最後にもう一度だけクワガタを砂に埋めて就寝。
明日の朝、ダニはどうなっているでしょう。楽しみです。

一夜明けて、クワガタの様子を覗いてみると・・・・

ありゃ!。思った以上の効果にビックリ。

触覚や目の周りについていたダニは綺麗さっぱりいなくなっています。特に気になっていた足先のボンボン状のダニさえ跡形も無く消え去っています。

背中に残る白い粒状のものもほとんどが砂。

じっくり調べれば、多少のダニは残っているでしょうけど、砂の入ったケースに移しただけというお手軽さを考えれば十分な成果といっても良いのではないでしょうか。
砂ケースに移してから1日もたっていないわけですし。

しかし、なぜダニは落ちてしまったのでしょう。
砂にまぎれた微細な埃がダニのしがみつく能力を奪ってしまったとか、ダニが砂粒に取り付いて砂と一緒に落っこちてしまったとか・・・あまりにも稚拙な推論しかお披露目できず、恥ずかしい限りですが、どう考えても砂にはダニに対する何か特別な効果があるようです。

「鳥の砂浴び程度でダニが本当に取れるのなら・・・・」と思いたった安易な実験ですが、想像以上の実験結果、さすがは野生動物の知恵、侮れませんね。

砂ケースを1つ用意しておけば、ダニの付いたオオクワをそのケースに移すだけでダニが取れます。使い終わった砂ケースは天日干しにすれば、中のダニは死滅するでしょう。
いわば何度でも繰り返し使えるダニ取り専用の隔離施設です。

ダニの取れ具合などを比較しながら、砂の粒子の大きさや、砂の深さなど、ダニ駆除に最適な条件を割り出していけば、さらに効率の良いダニ駆除が出来ると思います。

例えば、砂ケースに木片を入れておけば、仰向けになって木片の下に隠れる時は背中のダニ駆除になり、普段腹ばいになって歩く時は腹側のダニ駆除になるので、わざわざ砂の中に潜らせる必要がなくなるかもしれません。砂の中に潜らなければ、砂の粒子が細かくても問題ないので、ダニ駆除用の砂の選択肢が広がりますし、砂に潜らなくて済む分オオクワに負担がかからないため、2,3日の長期治療が可能になるかもしれません。

直接私が実験したいのですが、もうダニの付いたクワガタが手元にいません。
次の実験をするには、今回の実験で取り残したダニが繁殖し、またこのメスの体を覆ってくれるのを待つしかありません。しかし、今回の実験結果を見る限り、ダニが復活してくれる可能性は非常に低いように思われます。喜ぶべきか、悲しむべきか・・・・・。

今回の実験結果をヒントに、皆さんでいろいろ工夫してみてください。
重要なのは「湿った砂を使わない」という事と「天日干した後の砂は十分冷やす」の2点です。
砂の粒子は大きい方が良いのか、それとも小さい方が良いのか。クワガタは埋めたほうが良いのか、それとも木片などを入れて自分で潜るようにしむけた方が良いのか。その辺からデータを集めていけば、ダニ対策としてある程度確立された方法になるのではないでしょうか。

セメントに混ぜるただの砂を、「ダニの取れる魔法の砂」などと称して、法外な値段で売り出すクワカブショップが出現しない事を心から祈っております(笑)。


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